【気になる石】鳥の巣石灰岩中のオイル入水晶

オイル入り水晶とは、インクリュージョン(包有物)として石油様の有機物が含まれている水晶(石英の結晶)です。
ミネラルショーなどで広く売られているオイル入り水晶は、パキスタンのバロチスタン州から産するハーキマーダイヤモンド状のものです。



有機物インクリュージョンは可視光では主に黄色、褐色、黒色などに見え、紫外線を照射すると蛍光を発します。


このようなオイル入り水晶はハーキマーダイヤモンド様の水晶を産する場所に特徴的なもので、海外にしか無いと思っていました。
しかし、パキスタンのものほど美しくないものの、日本国内からもオイル入り水晶が産するということをA-Zearth日本の鉱物さんのツイートで知りました。



「石油の匂いのする奇妙な石灰岩」というのは鳥の巣石灰岩のことです。
鳥の巣石灰岩は、暗灰色瀝青質で浅海性の生物遺骸に富む特徴的な岩相を含むジュラ紀の石灰岩です。模式的な露出は高知県佐川地域の鳥巣周辺にあり、西南日本の四万十北帯および福島県相馬地域、本州北端部、さらには北海道までに断片的に分布しています。

(参考)
植松英行, & 指田勝男. (1996). 四国四万十帯北帯の鳥巣式石灰岩ブロックから産する後期ジュラ紀放散虫とその意義. 地學雜誌, 105(1), 53-66.

鳥の巣石灰岩の産状について地質学的に議論が続いていました。上記論文によると、少なくとも西南日本の鳥の巣石灰岩は、後期ジュラ紀に沈み込み帯前弧域の浅海で形成された後に、前期白亜紀にオリストストロームの構成要素(海底地すべり堆積物)として白亜紀付加体の砂岩泥岩に取り込まれたとされています。

一方で、このような有機物に富んだ石灰岩のことを「Stinkkalk」や「Anthraconite」と呼ぶそうです。海外では油田探査の指標の1つとされるらしく、日本でも戦時中には石油探査のために鳥の巣石灰岩に試錐が打たれたそうです。

(参考)
濱田隆士. (1993). 古環境情報源としての石灰岩類. 地学雑誌, 102(6), 698-707.

ちょっと時間不足で、なぜここまで有機物リッチになるのかまで調べきれていませんが、上記の論文にて、
鳥ノ巣石灰岩 の分布 は,北 は北海道から南は沖縄本 島まで実 に2,000kmを超え,一連ではないとしても類似した造礁環境が広い範囲で東北日本一西南日本にかけて 発達 した時代であったことは,地 史的にも極めて重要な情報である。礁の周辺相には貝類,腕足類の密集した部分もあり,鳥ノ巣石灰岩体 の総合的な古環境解析ならびに古生物 ・古生態学的総括が強く求められる所以である。
とあるのはおもしろいかもしれない。
そういえばパキスタン、四川省、そしてアメリカニューヨーク州の本家ハーキマーダイヤモンド産地の母岩の炭酸塩岩の堆積年代っていつだっけ。
有名鉱物産地に限って、案外地質学的な情報を知らないものですね。

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