ショーロマイトと森本柘榴石


"チタンを含む柘榴石"である森本柘榴石とショーロマイト(チタン柘榴石)について、ちょっと調べてみました。


森本柘榴石はザクロ石グループで、灰鉄柘榴石の2Fe3+ をTi4+Fe2+で置換したものです。

対してショーロマイト灰鉄柘榴石の2Fe3+Si4+を2Ti4+Fe2+で置換、ショーロマイトグループという独立したグループになっている。 柘榴石グループとショーロマイトグループは、まとめて柘榴石スーパーグループに属している。

一方で、柘榴石構造の場合、Si4+のところにはTi4+はほとんど入らないらしい。鉱物と元素のお気持ちを考えるのは難しい。

森本柘榴石Morimotoite発見の記載報告はこの逸見さんの論文、布賀鉱山のスカルンからの報告でした。
Henmi, C., Kusachi, I., & Henmi, K. (1995). Morimotoite, Ca3TiFe2+ Si3O12, a new titanian garnet from Fuka, Okayama Prefecture, Japan. Mineralogical Magazine, 59, 115-120. https://doi.org/10.1180/minmag.1995.59.394.11

このHenmi et al.の報告に対しては、コメントがつけられています。より一層の分析が必要であると。。
Fehr, K. T., & Amthauer, G. (1996). Comment on ‘Morimotoite, Ca3TiFe2+ Si3O12, a new titanian garnet from Fuka, Okayama Prefecture, Japan’by Henmi et al.(1995). Mineralogical Magazine, 60(402), 842-845. https://doi.org/10.1180/minmag.1996.060.402.18


Chakhmouradian, A. R., & McCammon, C. A. (2005). Schorlomite: a discussion of the crystal chemistry, formula, and inter-species boundaries. Physics and Chemistry of Minerals, 32(4), 277-289. https://doi.org/10.1007/s00269-005-0466-7

ザクロ石中の鉄の2価3価をXANESで決めないといけないのでこれまでの記載がアテにならず色々と難航していたけど、やっぱりMorimotoiteはあります、ってことになった。 Grew, E. S., Locock, A. J., Mills, S. J., Galuskina, I. O., Galuskin, E. V., & Hålenius, U. (2013). Nomenclature of the garnet supergroup. American Mineralogist, 98(4), 785-811. https://doi.org/10.2138/am.2013.4201


灰鉄柘榴石、ショーロマイト、そして森本柘榴石、これらが固溶体になって上の図のように色々な"Tiに富む黒い柘榴石"として産するようです。

ショーロマイトと森本柘榴石の違いは割と長いこと議論が続いていたらしい。
Antao, S. M. (2014). Schorlomite and morimotoite: what's in a name?. Powder Diffraction, 29(4), 346-351. https://doi.org/10.1017/S0885715614000529
"Comparison of schorlomite data from the type locality in Magnet Cove with morimotoite from Ice River, Canada and the type locality in Japan show that they are quite similar and cast doubts as to morimotoite being different from schorlomite."

日高の森本報告アブスト by浜根さん "マッピングにより相関を観察したところ、Ti-Fe が強く相関する一方でTi-Si および Fe-Si 間には相関が認められない。そのため分析値から実験式を組み立てる際に計算するべきFe3+はショーロマイト成分ではなく、灰鉄ざくろ石成分を想定" https://confit.atlas.jp/guide/event-img/jams2019/R1P-09/public/pdf?type=in (リンク先PDF注意)

そのような計算によって、日高のロディン岩中の黒い柘榴石はこういう結果で結構きれいに森本柘榴石ってことになっている。水によるSiの置換がわりと沢山ある。
とはいえ、やっぱり多少なりともSiのところをFe3+でも置換してるかもしれないし、厳密に端成分の量比を決めるのはハイパー難しいですわね。




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