6IAS感想戦


6IAS(International Archean symposium)に参加したので、その感想戦を。

地球物理学と地質学がしっかり協力しててすごい

ピルバラ地塊Pilbara cratonはまだしもイルガルン地塊Yilgarn cratonはフラットな地形の上にラテライト土壌や砂漠が10~20mくらい積もっているので露頭が全然ない。
何を研究するのでも、重力探査、磁場強度探査、MT探査などによってテレーンバウンダリーや大規模変形構造を捉える事がかなり重要になる。
全岩Nd同位体比やZrn Hf同位体比を地図の上にコンターマップのようにプロットして議論することに何の意味があるのか今までかなり懐疑的ではあったが、この文脈で見るとたしかになあと納得が行った。




いつの間にかZircon Ti-Ce-U oxybarometryが一般的になってた

2020年に出てたらしい。ジルコンの勉強から離れてしまったので見逃してたわ。てかこんな感じで指標提案が毎年のように出てくるので、この指標がこんな覇権勢力になってるとは知らんかった。
Loucks, R. R., Fiorentini, M. L., & Henríquez, G. J. (2020). New magmatic oxybarometer using trace elements in zircon. Journal of Petrology, 61(3), egaa034. https://doi.org/10.1093/petrology/egaa034
主に中国勢が使っているが、オーストラリア勢もかなり使っている。
(Eu/Eu*)/Ybなる珍妙なマグマ含水率指標も提案されていて、みんなでTTG起源の議論に使ってた。
なんとなくロジックはキレイに見えるが、本当に大丈夫なのか不安は強い。
まぁCeアノマリー使いたくないとか、そういう気持ちが強いのはわかる。

あと、Chris Fisher氏が発表してたが、Pilbaraの岩石の露頭の風化によるジルコンへの影響はかなり強いらしく、全く同じ岩体でも露頭試料とボーリングコア試料でジルコンの見た目がぜんぜん違う。 露頭試料のジルコンはメタミクトが酷くクラックに鉄さびのようなものが染み込んで茶色くなってるが、コア試料だとかなりキレイ。

でも、結局ジルコンはやっぱりメタミクトの影響を避けられないしコアいつでも取れるわけではないから、アパタイトの微量元素でなにか言いたいみたいな方向になってた。 ジルコンがメタミクトしてるのにアパタイトが平気だと(表面的な見た目だけから)信じて議論するのもどうかと思うが、Th, Sr,Yなどを使って割りと議論は立てやすいし、アパタイト中の硫黄濃度で母岩の成因や鉱床形成の可能性を議論したりするのに繋げられるのが嬉しいっぽい。繰り返すがどれくらい正しいのかはわからんけど。
まぁ世の中がそういう流れなら、それに乗って日本の顕生代の石でさっと後追いして綺麗にまとめて発表するのはありかもしれんね。

コマチアイトなど超苦鉄質岩中Cu-Ni sulfide depositは地殻由来の硫黄で油滴のようにできる

あまり馴染みがない話題だったが、PGM関連で興味はあった。
資源系の人たちが充実した発表をしていて、鉱床の成因論としてはかなり完成しつつあって面白かった。
油滴のように、というのは比喩表現ではなくて、まじでアナログ実験してNature com,に論文出してた。すげえ。アナログ実験で論文出したい。かっこいい。 Iacono-Marziano, G., Le Vaillant, M., Godel, B. M., Barnes, S. J., and Arbaret, L. (2022). The critical role of magma degassing in sulphide melt mobility and metal enrichment. Nature Communications, 13(1), 2359. https://doi.org/10.1038/s41467-022-30107-y

鉱床まではいかないようなそこらへんのPGMナゲットや、太古代じゃない時代のmafic-ultramafic cumulate、あるいはサルファイドの起源の議論にも参考になりそうかも。
スライドを共有してくれた人がいるので、リンクを貼っておく。他の発表スライドやYoutube動画もたくさん載っている。すごい圧倒的感謝。
https://research.csiro.au/magnico/workshops-and-resources/
リンク先PDF注意: https://www.aig.org.au/wp-content/uploads/2023/05/MEGWA-2023_LeVaillant_NiExploration_toshare.pdf

みんなμXRFとコアスキャナー使いまくり、薄片なんてold school geologyや

まじで薄片写真が出てこない。ごく一部の変成岩岩石学者だけだった。
みんなコアX線スキャナーやμXRF使いまくってる。弊学でもガンガン導入しないとあかんな。

花崗岩分類を頑張る理由は金鉱床を探すため!

low-Ca graniteとかhigh-Ca graniteとかsanukitoidとかひたすら出てきた。サヌキトイドってそんなに人気だったっけ…サヌカイトじゃなくてサヌキトイドな。
サヌキトイドは含水マントル部分溶融の指標になるので、鉱床ができやすいタイプの湿った火成活動の指標として注目されてるとのこと。 まぁ結局太古代の造山性金鉱床は二次的に動いてしまうので、火成活動の場所を特定してもさらに構造的な検討を重ねないといけないとのこと。やはり地球物理が大事になってくる。


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